SBTとは何なのか?導入背景や企業の取り組み事例を紹介
SBTとは何か知っていますか?
言葉自体はあまり知られていないかもしれませんが、内容としては難しい言葉ではありません。
今回はSBTについて説明していきます。
目次
SBTとは
SBTは、SCIENCE-BASED TARGETSの略語です。
企業による温室効果ガス(GHG)の削減目標を、5~15年先を目標年として、パリ協定の水準と整合させ設定する、温室効果ガスの削減目標のことです。
パリ協定では、地球の気温上昇が産業革命前の気温と比べ2℃未満に維持し、1.5℃に抑えることが目指されています。
これに見合う数値になるよう、企業が脱炭素化を図るための削減目標を定めることをSBTと呼んでいます。
導入の背景
地球温暖化をもたらす温室効果ガスの総排出量は世界的に増加し続けており、このままでいくと 、地球規模での平均気温は、今世紀末までに3.7℃から4.8℃へと上昇することが予想されています。
地球環境を保護し、人間が安心して快適に暮らせる環境を維持、向上すべく、温室効果ガスの排出量を抑えていく、脱酸素化を推進していかなくてはなりません。
そこで、CDP、 国連グローバル・コンパクト、 世界資源研究所(WRI)、 世界自然保護基金(WWF)の世界的な機関が共同でイニシアティブをとり、意欲的で有望な企業の温室効果ガスの削減目標を設定するための手法として、SBTという削減目標の設定基準を開発しました。
世界の炭素予算を達成するには、気温上昇幅を対処可能な2℃に抑えなくてはなりません。
SBTは世界の炭素予算をもとに、取り組みを行う企業に対して温室効果ガスの排出量を配分し、排出上限を設定する仕組みです。
なぜ、企業に脱酸素の取り組みが求められるかといえば、世界の温室効果ガス排出の大部分を、直接または間接的に企業で排出してしまっているためです。
地球環境を保護し、低炭素経済への移行を図っていくためには、企業の意識転換と取り組みが欠かせません。
企業での取り組み
日本の企業でも脱酸素化に向けた積極的な取り組みが認められ、SBTの認定を取得した企業が増えています。
いくつか事例をご紹介します。
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社では、温室効果ガスの中期削減目標を2030年までに2015年比で30%を掲げ、2017年3月に日本の食品会社として初めてSBTの認定を取得しました。
目標達成に向けて、コージェネレーションの導入など製造工程におけるエネルギー利用効率の向上、同業他社との共同配送の推進をはじめとする、二酸化炭素排出量の少ない貨物鉄道輸送への転換、省エネ型の自動販売機の導入や容器の軽量化などに取り組んでいます。
富士通グループ
富士通グループでは、2017年5月に中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision」を公表しています。
CO2ゼロエミッションをはじめ、脱炭素社会の緩和と適応を三本柱に掲げ、2050年までに気候変動対策においてはたすべき役割を明確にした二酸化炭素の削減シナリオが認められ、SBTの認定を取得しました。
ゼロエミッションを達成するため、データセンター・ファクトリー・オフィスごとに、CO2削減に取り組んでいます。
たとえば、消費電力の多いデータセンターにおいては、機器の稼働率やファンの回転数、センターの空調制御を人工知能(AI)で最適化するなどして、消費電力の削減を図っています。
SBTを設定するメリット
企業がSBTを設定して温室効果ガスの排出を削減することで、環境や気候を守り、地域社会を守ることにつながるだけでなく、企業の事業活動にもよい影響を与えるのがメリットです。
企業は、活動する環境を最適に保ちながら、長期的な事業価値を構築でき、将来的な収益性を守ることにつながります。
代表的なメリットを見ていきましょう。
コスト削減による競争力の向上
現在の事業活動においては、石油などの化石燃料によるエネルギーに多くを依存しています。
有限資源である化石燃料は資源の減少とともに、価格がますます上昇していくことになるでしょう。
事業活動にかかる費用を抑えることで、競争力向上にもつながります。
原材料価格の上昇での損失を抑えることで、企業が生き残る力、世界的な競争に勝つ力が得られるのがメリットです。
企業の信頼と評価の向上
地球温暖化防止や環境保護に貢献する企業としてのCSRを果たすことで、投資家や取引先、一般消費者、従業員の信頼が得られ、売り上げアップや求職者が増えるなど、人手不足の時代に人材確保にもつながります。
政策立案者や環境団体などからも評価が得られ、事業活動にとっても有利に働くのがメリットです。
革新的な改革の後押しと将来性のアップ
二酸化炭素を抑えるための取り組みや、低炭素経済への移行を通じて、企業は工夫を行い、そのための技術開発や、事業慣行の見直しや進展に取り組むことになります。
その結果、自社だけでなく、自社製品の開発や新たなサービスの提供につながり、企業競争力を高め、売り上げアップや収益アップにもつながります。
イノベーションにより、環境投資を十分に回収できることが期待され、将来的にはプラスです。