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炭素税とは?炭素税について詳しく説明

炭素税とは?炭素税について詳しく説明

近年、炭素税を導入しようという話が出てきています。
ただ、炭素税が何かわからないという方も多いでしょう。
そこで今回は、炭素税について詳しく説明していきます。

目次

炭素税とは?

炭素税とは、化石燃料(石炭や石油、天然ガスなど)を使用する際に、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量に応じて税を課す制度です。

狙いは、この税負担を軽減するため、国内のあらゆる企業が化石燃料の使用を抑える取り組みを始めることにあります。
また、それに伴い生産コスト増が予想されるため、完成製品価格にコストが添加され、消費者においても需要が抑制されることで全体的な二酸化炭素の排出量を減らす流れにつなげる目論見があります。
この仕組みは、二酸化炭素に価格をつけて排出削減を促進する「カーボンプライシング=CP」のメインとなる手法の一つです。

CPは1990年にフィンランドがいち早く政策に採り入れ、その後特に欧州で導入が進んでいます。
2021年1月現在、二酸化炭素排出量1トンあたりにかけられる課税額は、スウェーデンをトップにスイス、フィンランドなどで高額になっており、日本円にして1万円に相当する課税額となっています。

日本におけるCPと炭素税

環境省は低炭素社会の実現に向けて、「地球温暖化対策のための税」を段階的に施行してきました。
平成24年の導入当初予定されていた最終税率への引き上げは平成28年4月1日に完了していますが、この税制は環境負荷に応じた税負担を求めるものです。
ここで言う環境負荷が二酸化炭素の排出量にあたり、石油や天然ガス、石炭などすべての化石燃料を利用することに対して、公平に税負担を負わせる仕組みになっています。

これとは別に炭素税についても検討がなされていますが、こちらが2050年の脱炭素化に向けたCPの取り組みとなっています。
ただし、結論からすれば、炭素税の制度については経済産業省も環境省もまだ具体的な方向性は固めていません。
現在5年度改正の課題に先送りされる見通しとなっていますが、いずれにせよ国が向き合うべき課題として、議論の場に積まれていることは事実です。

CPをめぐる世界

CPに関しては、環境省が脱炭素社会を実現できる有力な手段と位置づけています。
炭素税はCPのメイン政策であることから、これまでも積極的に議論を進めるよう国が経団連へ求めてきました。

現在施行されている国内の地球温暖化対策税制においては、ご存知の通り、二酸化炭素1トンあたりの税額は289円となっています。
前述しましたが、CPが盛んな欧州では同等量で日本円にして1万円を超える税負担となっているわけですから、それに比較して課税が軽すぎると外国より指摘を受けていることは事実です。
とはいえ、CPに関しては北欧と比較されることがどうしても多くなってしまいますが、北欧と日本とでは税率がまったく違うことを考慮しなければなりません。
本来は比較対象としても意味はないため、日本がまるで対策がなされていないような状況ではないことは理解する必要があるでしょう。

COP26では、日本は石炭火力発電廃止の明確な道筋を打ち出さなかったとして遅れを指摘されましたが、脱炭素の取り組みは経済成長と連動しなければなりません。
この点は岸田総理が炭素税をどう活用するか、判断が問われている状況です。

炭素税に対する経団連の見解

菅前首相が掲げていたCPにおける令和3年度税制改正大綱にも炭素税は盛り込まれ、規制の緩い外国からの輸入品にも「国境炭素税」を課すといった新税創設も課題に挙がっていました。
ただ、経済界においてはCPは否定から始めるべきではないとしながらも、割高なエネルギーコストや許容する社会を築けるか懸念があることなどから、反対の声もあります。

特に、これまでもギリギリの線で省エネ対策に取り組んできた企業に対し、今ここでさらなる追加負担を求めることは、国際的競争力を削ぐことになりかねないというのが経団連の意見です。
新型コロナウイルスによる資源価格の高騰で打撃を受けている現在の産業界において、事業の立て直しがこれ以上遅れるような要因は、もちろん避けるべきでしょう。

こうした状況下にあり、炭素税を含めた政府の制度設計の検討は現在進んでいないというのが実情です。
しかしながら、いつまでもそのまま保留し続けてはいられない課題であることもまた事実です。

経済産業省が想定する炭素税のメリットデメリット

前述した通り、日本は炭素税の導入を経済成長と両立させるというのがメインの考えです。
そこで経済産業省が考える炭素税導入のメリットデメリットをまとめてみましょう。

まず炭素税導入のメリットですが、価格が一定であるためビジネスの予見可能性が高いことが挙げられています。
制度としては既存の税制を活用できるため行政執行コストは抑えられ、国としては安定的な財源確保につながります。

反対に炭素税導入のデメリットですが、二酸化炭素の排出量は企業側がコントロールできるものではないため、一概に「削減」といっても非常に不確実な取り組みです。
最悪の場合、低所得者へ逆進性をもたらす懸念がありますし、先にも触れた通りエネルギーコストが高いため、国際競争力が削がれるおそれがあります。

こうした判断材料を慎重に吟味しながら、時間をかけて総合的な議論が進められていくことになっています。
一部には炭素税ではなくインセンティブ方式で減免措置を導入したほうが良いとする意見などもあり、今後もこうした検討が続けられる見込みです。